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盛子は笑ひながら顔を紅らめた。
房一は話を変へた。
と、練吉は房一の方をふりむいた。
「ほう、さうか。毎年あるのかね。そいぢや、これから度々見られるわけだな」
「なに、切れてるつて?」
「それで、何かね。ドイツ兵は徒歩てくで通るんかね」
「先生お帰りになりましたかね」
「さう、カワラケ、カワラケ云ひなさんな」
が、練吉が駆け登つたのを見ると、先方の男は急に威丈高になつて怒鳴つた。
いくらか浮うはつ調子に口の軽くなつた小谷にひきかへ、今夜の練吉は何となく元気がなかつた。細かいながらに絣かすりの目のはつきりした大島の上下揃ひを稍ぞんざいに着こみ、吃り気味に話をする彼には、だらりとした様子と同時に、どこか家風の結果といふやうな一脈の潔癖さが混交していた。
庄谷の細い眼が又微笑した。だが、その瞬間に現はれたほんの少しの人なつこさ、古い記憶のほのめきは、すぐ又大急ぎでどこかへ隠れこんで行くやうに見えた。
「脚気の方は?」